次世代のスターを発掘し、日本のヒップホップシーンに数々の衝撃を与えてきたオーディション番組『ラップスタア誕生』。シーンへの登竜門として、数多くのスターを輩出してきたこの番組で、九州にルーツを持つラッパーたちが大きなインパクトを残してきたことをご存知だろうか。

本稿では、ラップスタアを揺るがした九州のMCたちをピックアップし、その功績と魅力に迫る。

Skaai (大分育ち)

2021年の『ラップスタア誕生』にて、圧倒的な表現力でベスト8に輝いたラッパー、Skaai。彼のパフォーマンスを唯一無二のものにしている源泉は、そのアイデンティティにある。韓国人の母と中国系マレーシア人の父を持ち、アメリカで生まれ大分県で育つという複雑なバックグラウンド。さらに特筆すべきは、九州大学の大学院に在籍中、本格的にヒップホップの世界へ飛び込んだという異色の経歴だ。番組で彼が披露した多彩なフロウと、知的で卓越したライミング技術は、その多文化的な背景と学識に裏打ちされたものであり、他の参加者とは一線を画す存在感を放っていた。

Kohjiya（長崎県長崎市出身）

長崎県長崎市出身で、現在は東京を拠点に活動しているKohjiya。2024年シーズンでは、高いスキルと表現力、スター性で見事優勝をおさめた。彼の音楽は、メロディアスでキャッチーなフロウと、等身大の感情や野心を表現したリリックが魅力だ。ソロ活動と並行して、キャリア初期から活動を共にするSHIÓLA、AURALとの3人組クリエイティブコレクティブ「MADz's」のメンバーとしても活動している。

ESTEY（福岡在住）

現在放送中のオーディション番組『RAPSTAR 2025』のSELECTION CYPHER Eで、注目を集めているラッパー、ESTEY（エスティ）。シカゴ出身でありながら福岡を拠点に活動するという、唯一無二な経歴を持つラッパーだ。彼の名が知られるようになったきっかけは、2021年頃に「Spencer大志」名義でTikTokで開始した「Daily Bars」という企画だ。毎日ラップを投稿し続けるこの企画で、彼の卓越したスキルが話題となり、徐々にファンを増やしていきた。 その人気はオンラインの世界に留まらず、2024年には九州を代表する音楽フェス『Sunset Live 2024』への出演も果たしている。 TikTokでの地道な活動を原点に、大型フェス、そしてラップスタア誕生へと着実にステップアップしてきたESTEY。今後のさらなる飛躍から目が離せないアーティストの一人だ。

Sonsi（鹿児島県出身）

現在放送中の『RAPSTAR 2025』でSelection Cypherに選出された、鹿児島県出身のラッパー。彼はその強烈な個性で、早くもシーンに大きな爪痕を残した。特筆すべきは、複雑な家庭事情や自身の病気といったパーソナルな経験を、鋭いパンチラインへと昇華させるリリシズムだ。そのスタイルは審査員からも高く評価された。今回ピックした「何かになりたくて (feat.raraso) demo」のようにハイパーポップのアプローチも技巧的かつリリカルだ。自身の生い立ちそのものをヒップホップに落とし込む才能、そして人々を惹きつけるバイブスと表現力には、まだ見ぬ可能性が秘められており、今後の放送から目が離せない。

Trrry（福岡県田川市）

現在放送中の『RAPSTAR 2025』SELECTION CYPHER Hで注目されたTrrry (トライ) 。rageやエモラップ、trap、ドリルなど個人的にどれをとっても一級品である。プロデューサーLil-Gとの共作EP「VIP」は脳が吹き飛ぶのでぜひ聞いてみてほしい。